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声を出す時の身体感覚 (2) [体験記:音のレッスン(完)]

清里での「風の歌」のコーラス合宿が無事に終わりました。前回の初参加の時は右も左もわからないまま、とにかく無我夢中で声を出していました。そして、ほんの一瞬でも美しい響きの中に浸る体験ができた瞬間の「これこそ自分が求めていたもの」、そんな感動をお土産として持ち帰った合宿でした。

今回はもう少し自分自身の問題意識とか課題を明確にして臨んだ合宿であり、そのことを前回の記事に書いたのでした。そして合宿を終えて、3日間の集中した練習の中で感じたことをメモしておきたいと思います。

まず最初の感想は「意外と疲れた」というものです。コーラスの合宿ですから激しく体を動かしたりするわけではなく、ひたすら歌い続けるだけです。ですから、肉体的な疲労というわけではなく、長時間の精神集中からくる疲れ、そんな感じです。

1曲を通して歌うことはほとんどなく、1小節とか1フレーズとか、そんな単位で歌ってはチェック、歌ってはチェックの繰り返しです。ですから、1回に声を出している時間はとても短いのです。しかし、その短い時間が終わると、後頭部はビリビリと軽い痺れ感覚が残り、頭の方からスーっと血が引くのが感じられます。

それから前回の記事で書いた自分自身の身体感覚についてです。もう一度、前回の記事から見出しだけ書き出します。

1 音、響きを縦にとらえる意識
2 後頭部はスタジオ/ミキシング・ルーム感覚
3 喉・声帯を忘れ、腹・丹田を意識
4 体全体は上虚下実

1と2については後回しで、先に3と4についてです。

「3 喉・声帯を忘れ、腹・丹田を意識」について補足というか、新たな発見がありました。とても些細なことなのですが、歌っている最中に下半身で意識しているのはどこなのだろうと自己観察してみたのですが、それは仙骨周辺のようです。

腹・丹田はどちらかというとアコーディオンの蛇腹みたいのもので実際にピクピクと動いている部分ですが、そこに意識を置くのではなく、(イメージ的に)その可動部を支えているのが仙骨周辺で、ここをピタッと意識すると下半身全体が存分に働く、そういう感じです。逆にこの部分への意識があいまい、グラグラした感じだとどうもよろしくないのです。

さらに精緻な感覚ですが、何度も書いてきた「風の歌」が追求している「後ろに声を出す」こと、この感覚を支えているのが私の場合はこの仙骨周辺への意識のようです。ついでに言えば、意識のポイントを喉の辺りに移すと、「前に声を出す」普通の歌い方になる感じです。遊ぶわけではありませんが、二つの歌い方を歌い分けられることも「自分が何をしているのか、はっきりと意識できている」という意味で重要なことかもしれません。

このように書いてもピンとこないという方も多いとは思うのですが、武道や舞踊とかそういう微妙な身体感覚を要求される世界を体験された方ならわかっていただけるかもしれません。

「4 体全体は上虚下実」については、腹・丹田が働いた状態で声を出すことを前提に、「全体の音を徹底的に聴く」ことがうまく行われている場合、上半身はスーと上に向かって伸びていく、引っ張られるのを感じます。上半身はどこまでも上昇しようとするが、途中で息が続かなくなるので息継ぎ(ただし意識は上昇感覚を維持して、気持ちを切らない)をする、1拍1拍、1音1音、その繰り返しという感覚があります。

そして、曲の終わりとともに我に返った瞬間、頭から血が引いていくのがはっきりと感じられます。ちょうど、オーディオ機器に付いている音圧を示すレベルメーターの針が曲の終わりとともに左(無音状態)に戻るイメージです。面白い感覚ではありますが、こういうことを繰り返すのが体にいいのかどうか、ちょっと心配な気もします。

次に1と2についてです。

合宿の間、夜の練習は10時半ごろに終わり、風呂に入り、その後、軽くアルコールも入って皆で懇談タイムです。その中で、一人の女性の方のお話が私にとって特に印象的でした。これまでの記事で書いてきたように鍋島先生のレッスンは一般の音楽のレッスンからすればかなり風変わりです。

私は初めてレッスンを受けたとき何の抵抗感もなかったですが、変わったレッスンだなとは思いました。その女性は初めてのレッスンを受けて「なんだ、これはエネルギーワークじゃないか」と思ったという話でした。私はいわゆるヒーリング系のレッスンとか施術とかほとんど受けたことがないので、「エネルギーワーク」自体がどのようなものかピンとこないのですが、「ふーん、これはエネルギーのレッスンなんだ」と妙に印象に残ったのです。「エネルギーワーク」そのものがどんな内容なのか、それはいつか彼女に詳しく聞いてみようと思います。

さて、「エネルギー」という言葉に触発されて、私が練習中に1と2に関連して感じたことを書いてみます。それは「音の空間への働きかけ」ということについてです。

音も一つのエネルギーであり、それがコーラスの響きとして、大きな音空間を作っている、ハーモニーをそのように捉えるとこもできるでしょう。

そのエネルギーをどのように感じているのか。これまで書いてきたことからわかるように、私は聴覚と肉体的な感覚・皮膚感覚がメインで感じるのですが、人によってはオーラのような視覚的なイメージ、あるいは感情の変化のようなもので感じられる人もいることでしょう。

以下は私が感じる音空間のイメージとその音空間への働きかけをあえて文章化してみたものです。表面的には歌を歌っているのですが、1音1音に集中することに努めているうちに、私の内的な感覚では歌っているという感覚がだんだんと薄れてきていているのです。それでは何をしているのか、そういう話です。

私の「聴覚と肉体的な感覚・皮膚感覚がメインで感じる」感覚をとりあえず「AK感覚」とします。AuditoryとKinestheticの頭文字をとっただけです。

AK感覚で捉えた音空間を視覚的なイメージで表現すると、シャボン玉が近いです。シャボン玉のイメージに似せて音玉というものを考えてみます。

音玉は
 ・とても柔らかく繊細な素材でできており、力をいれるとすぐに割れてしまうデリケートな玉である
 ・玉は透明に近く、注意深く観察しないと見えない
 ・玉は送り込む音エネルギーの周波数に応じて浮かぶ高さを変える(音程に相当)
 ・玉は送り込む音エネルギーの強さに応じて大きさを変える(音量に相当)
 ・音エネルギーを安定的に送り続けないと、状態を維持できない
 ・玉同士が接着剤で貼り合わせたようにくっつくことができる(ハーモニーに相当)
という特徴を持っています。また、音玉は1曲全体ではなく、1拍1拍、1音1音に相当する瞬間的な存在です。

歌っている最中に私は音玉相手に何をしているのでしょう。

まず音玉の存在を感じる心の準備です。

音玉は透明に近い存在なので、雑念を捨てて、かっこよく言えば無念夢想に近い状態に自分の意識をもっていかないと見ることができません。これは動物が獲物を追うときの周囲全体に気を配っている研ぎ澄まされた感覚に近いでしょうか。こういう状態で初めて音玉の実体を捉えることがことができるのです。音玉が結合してハーモニーを作っているときは特に意識の状態が大事です。そして、この意識は最後まで保持すべき、土台の意識です。

次に他のメンバーと力を合わせて音玉を作ります。

玉は指定された高さ(音高)に素早く浮かせなくてはなりません。それには思いっきりよくスパッと音エネルギーを送る必要があります。迷ったり、音を探りながらでは美しい音玉になりません。AK感覚では音エネルギーを生み出しているのは仙骨周辺への意識で、そこへの意識のかけ方で音エネルギーの強さを調整しているという感覚が芽生えてきています。

音玉ができたら、次に音玉の安定を維持します。

音エネルギーを発しているのは生身の人間ですので、瞬間瞬間、微妙に変動しています。それに連動して、音玉の大きさ・高さも瞬間瞬間に変化しており、これを安定させなくてはなりません。

この変化を感じるべく全神経を研ぎ澄ませることが必要で、これも先ほどの狩の感覚です。あるいは、よく戦闘機のファイトシーンで「ターゲットをロック」というセリフを耳にしますが、そんな感覚です。この一連の操作の結果、音が心地よくゆらぐのです。安定化の作業中、AK感覚では後頭部の振動で感じています。後頭部が音楽ホールのような感じで、そこに音が響いているのです。

音玉の存在時間は音符で指定された長さ、あるいは指揮者が指定した短い時間です。次の瞬間には新しい音玉を作ることに気持ちを切り替えなければなりません。あとは曲の終わりまでこれらの操作の繰り返しです。

私が歌っているときの感覚を音楽的な表現ではなく、あえて「エネルギー」ということに絡めて表現しようとすると以上のような感じです。自分でも書いてみて「なるほど」と思います。

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コメント 2

まりうす


合宿お疲れさまでした!
毎瞬、生み出すエネルギーの音玉…

まいなさんのAK感覚による【風の歌】のハーモニーのイメージ、とても面白いですね♪

ご自身の身体感覚の微細な部分まで観察して、それを言葉にできるのは、一つの特技だと思います

感心しながら読ませていただきました!

ありがとうございます(*^o^*)

by まりうす (2012-05-26 01:39) 

まいな

まりうすさん、かなり密度の濃い合宿でしたね。
お疲れ様です。

普段は「音楽」という視点から体験記を書いていますが、まりうすさんの一言から「音玉のワーク」という新たな視点も生まれました。

ありがとうございます!

by まいな (2012-05-26 11:19) 

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